第4回萩原朔太郎記念とをるもう賞の選考会が2014年6月8日、やお文化協会で行われ、4月末までに全国から応募された64冊の詩集の中から、第4回受賞作は林美佐子詩集『鹿ヶ谷かぼちゃ』(詩遊社)に決定しました。
選考委員は粟津則雄、季村敏夫、暮尾淳、細見和之、山田兼士。授賞式は9月27日(土)午後2時より、八尾市プリズムホールにて執り行われ、受賞者には、賞状と賞金50万円が贈られました。
詳細は「びーぐる 詩の海へ」第24号(7月20日刊行予定)誌上に掲載されました。
最終候補詩集は次のとおりでした。(50音順)
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浦歌無子 |
「イバラ交」 |
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小林坩堝 |
「でらしね」 |
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近藤弘文 |
「燐の犬」 |
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高橋勇大 |
「世界は何処に浮かぶ雲だろうかこの心はと言うのだろうかそんな言葉が人間であるならば私は雲」 |
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竹腰素 |
「しゃぼん玉刑」 |
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林美佐子 |
「鹿ヶ谷かぼちゃ」 |
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山下洪文 |
「僕が妊婦だったなら」 |
林美佐子 プロフィール
1970年 青森県生まれ
2013年 「鹿ヶ谷かぼちゃ」(詩遊社)刊行
詩誌「詩遊」所属
受賞の言葉 林美佐子
とをるもう そのあまりにも魅力的すぎる響きをまえにして、本当にこのたび拙作が受賞させていただいてもゆるされるのだろうかと、ただおそれいるばかりです。
受賞にあたいする力をこれからしっかりつけていけ、との叱咤をいただいたように感じております。身のひきしまる思いです。
本棚にある、日やけした岩波文庫の萩原朔太郎詩集は、20年以上まえに買いました。衝撃をうけました。とまどいました。こわくもなりました。東北の純朴な学生だった私は、わかりきらないままに魅了されていました。
どうしようもなく好きな詩、いやになるくらい憧れてしまう詩、嫉妬してしまうほどすごいと思わされる詩、そういった詩をひたすらまねて、追いかけて、すこしでも近づきたいという一心で、きびしいご指導をたまわりながら、どうすれば過不足なく書ききれるのだろうかと、のた打ち回りつつほそぼそとなんとか書いてきて、いまにいたります。
これまでお世話になったすべての方々に、深く感謝を申し上げます。まだまだ力不足です。身にあまる受賞をはげみとして、これからも、真摯に努力をしてまいりたいと存じます。
このたびは本当にありがとうございました。
◆選考評◆
選評 粟津則雄
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最終選考に残った諸詩集はそれぞれ独特の個性を示していて面白く読んだが、私がとりわけ興味を覚えたのは、林美佐子さんの「鹿ヶ谷かぼちゃ」である。何やかや、手のこんだ細工のどれも、読むやいなや、その強い個性を突きつけられたわけではない。読み始めて私がまず感じたのは、近頃の若い人びとの詩集ではあまり見かけぬ、どこにも余計な力の入ったところのない、自然でしなやかな言葉の動きである。そこには、あれこれ事こまかな細工を重ねて読者を操ろうとする下心とか、思い切ったイメージを突きつけて読者の意表をつこうとする力みは感じられない。そういう下心や力みに対しては読む方は、つい構えてしまうのだが、この作者はまことにしたたかであって、その自然でしなやかなことばの動きによって読む方の警戒心を解いてしまう。そのままその動きに身を委ねるうちに、イメージは不思議な生き物のように、飛躍し、変容し、変質して、われわれは思いがぬ世界に導かれるのである。そのときわれわれがいささかも無理強いされたように感じないのは、作者があちこちに、一見何気なく、だが周到に埋めこんでいる細工が、読者に対する効果だけを目指したものではなく、自分自身と人間に対する苦い凝視が生み出したものであるからだ。こういう作者の詩業のこれからの展開がまことに楽しみである。 |
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